2025年10月24日から1泊2日の日程で,上海で開催された研究会に行ってきました。
上海はご存知のとおり,中国の経済の中心地で,5つある中央政府直轄市の1つ,人口2400万の巨大な都市です。今回は复旦大学中山病院(Fudan University Zhongshan Hospital)が主催する研究会に呼ばれ,講演してきました。会場は虹橋空港の近くのホテルで,羽田や韓国の金浦空港とはシャトル便があるため便利です。当初,日本や韓国から何人もの先生を招く予定だったのでこの場所になったのでしょうが,蓋を開けて見ると,日本からは私1人のみ,韓国からは0で,他の外国人はHarvardから1人のみでした。案の定,私が利用した浦東(プドン)国際空港からは大渋滞で移動に結構な時間がかかりました。

上海では,上海交通大学と復旦大学の医学部が有名で,病院もそれらの附属病院が大きく歴史ある病院として有名です。病院名の中山とは孫文の日本名に由来し,中国にはこの「中山」という名前がついた施設が多く存在します。意外なところに日本との繋がりがあるものです。

この病院での胃癌の会は途中名称が変わっているようですが,私は第2回の18年前に招かれて,それから何度か登壇しています。18年前は,1日中最前列に座らされて,いつ英語での質問が飛んでくるかわからない環境におかれ,とてもつらかったことを昨日のことのように覚えています。非常に思い出深い研究会です。

私の講演は10月25日の朝でした。つたない英語での発表です。一見普通の会なんですが,なんとAIによる同時通訳が大きなスクリーンの両端に表示されていました。今回は,私が唯一,中国語を話せない人間なので,中国語を日本語に,私の英語を中国語に,ほぼタイムラグなしに翻訳していました。機会翻訳なのでもちろん間違いはあるのですが,スライドを見ていれば大体のことはわかります。初めての経験でしたが,今後,国際会議でのやりとりが変わるかも知れないと強く感じました。

発表では,盛んに免疫チェックポイント阻害薬(ICI)のことを喋っていました。どうも中国製のICIがあるようで,非常に安価とのことです。保険は日本同様通っていないようですが,安価なので,術前化学療法として使用し良い成績が出ているようです。

会場の外にはいくつかの企業ブースがあり,中国製のロボットが展示されていました。実際の使用感はわかりませんが,現存する米国製のものをより進化させたもののようで,すでに中国国内では上市されているとのことです。電気自動車や自動運転もそうですが,日本では安全性を重視してじっくりと進めている横ですごい勢いで進化しているようです。今後の外科がどう進んで行くのか,考えさせられる訪中でした。